
60年代。冷戦下のソ連が、国家の威信をかけて建造した原子力潜水艦K-19。しかし、処女航海の途中、原子炉の冷却装置が停止し、メルトダウン(炉心溶融)の危険が迫った…。1961年に実際にあった話を元に、女性監督キャスリン・ビグローが映画化。メルトダウンの危機にさらされる潜水艦、アメリカン・ヒーロー、ハリソン・フォードが任務遂行型のロシア軍人、リーアム・ニーソンが部下を思いやるヒューマニスト艦長を演じ、二人の「魂の衝突」があるときけば、それだけで見ごたえありそうな気がします。
撮影はモスクワ、カナダ・ウィニペグ、トロント、ノヴァ・スコシア半島ハリファックスで行われ、旧ソ連時代の元艦長が主力スタッフとして加わり、海軍の訓練や艦内での作戦行動など、テクニカル面でのアドバイスをしてしる。

ロシアの処分場に眠る本物のK-19は損傷が激しく使い物にならないため、フロリダ半島の都市セントピーターズバーグに展示されていた旧ソ連時代の古い潜水艦(K-19よりやや小ぶり)を、交渉の末借り受け、撮影用に投入した。ドアのノブやダイヤルといった小さなパーツまで、本物そっくりに再現された艦内は、ロシア語のラベルプレートがあちこちに貼られ、管が張り巡らされている。
K-19
K-19に搭載されている3発の弾頭ミサイルは、有毒で腐食性・爆発性のある液体燃料を有し、扱いも非常に難しい。さらに、原子炉が小型で性能を維持するための安全許容範囲がまったくとられていなかった。1961年、NATO基地の鼻先を航行中のK-19で、原子炉の冷却装置から漏れが生じる。K-19の乗組員は放射能漏れを食い止めるため、でき得る限りの手立てを尽くが、放射能被爆で7人が死亡、数年間で20人が後を追うことになる。彼らの命がけの修理によって奇跡的に甦ったK-19だが、ふたたび1969年、何かに呪われているかのようにアメリカの潜水艦ガトーと衝突、1972年には航行中火災に見舞われ、28人の乗組員を失った。ついにこの艦は「ヒロシマ」という異名で呼ばれるようになる。1961年の事故は旧ソ連時代には公にされず、K-19の乗組員たちの英雄伝や尊い犠牲は28年もの長きにわたって封印されてきた事件が、この映画で解かれた。
監:キャスリン・ビグロー/出:ハリソン・フォード、リーアム/ニーソン